【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第49章 守りたいもの
安室side
あれから3日経った。
プロポーズの返事は未だリラから聞けていない。
渡そうとしていた給料数ヶ月分の指輪はまだ僕の手元にリボンがかかったまま置いてある。
どうすればいいのか、答えが浮かばない。抜け出せない迷路にいる気分だ。
リラは、いつ社長に返事をするんだろう。
そして、なんて返事をするんだろう。
「…さん…
降谷さん…
降谷さん!!」
「っ!?」
隣で大きな声で本名を呼ばれ、僕はハッとそちらを見た。
名前を呼んだのは、運転席に座っている風見だ。
何度も呼びかけても上の空で、ようやく反応を示した僕を見て、心配そうに顔を覗き込んでくる。
「降谷さん、何かあったんですか?
今日はずっとボーッとされているような」
「いや?何でもないよ」
「降谷さん…」
明らかに何か悩みを背負っているのがバレバレのくせして、何でもないと去勢を張る僕を、風見がさらに心配そうな顔を見せた。
そんな風見に、僕はもしもの質問を尋ねた。
「…風見」
「何でしょう?」
「もしも、明日から沖野ヨーコの歌が一切聴けなくなったら、どうする?」
「な、何ですか突然」
突拍子もないよくわからない質問に首を傾げる風見に、僕は答えを催促した。
「いいから、答えろ」
「…そうですね…
そりゃあ、ショックですよ…
多分1ヶ月ぐらいは食事も喉を通らない気がします…
というか、そんなことになったら大勢の沖野ヨーコさんのファンが悲しみますよ!
中には絶望して自死するファンもいるかも…」
「…そうか」
きっとリラの場合も同じだな。
リラの歌声が今後一生聴けませんと言われた時のファンの絶望は計り知れない。