【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第46章 掴みかけた夢 ☆
安室side
ある日の夜、部屋で夕食を終えた僕がキッチンで食器の片付けをしていたとき、リビングで山岸さんからの電話を取ったリラが声を上げた。
「え?社長が?」
開口一番そう言ったリラは、その後うんうんと頷きながら山岸さんの話に耳を傾けている。
「ん。わかった。
明日の夜ね。了解」
そう言って電話を切ったリラ。
リラの口から初めて聞くその単語に、僕は思わず首を傾げた。
「社長?」
「うん。うちの事務所の社長。
普段はアメリカにいるんだけど、明日一時帰国するらしいの。
で、夜に会食の予定が入っちゃった。
悪いんだけど零、わたし明日の夜は外で食べるね?」
「あぁ。わかった。
一緒には寝られる?」
一緒に夕食を取れなくても良い。
ただ、眠るときは寄り添って二人一緒がいい。
そんなことを思うなんて、僕はどうかしてるな…
たまに思う。
リラに少し依存しているんじゃないかと。
「わたしの帰る場所はここだけだよ?」
リラはそう言いながら、僕を見て幸せそうに笑った。
僕の大好きな、出会ったときからずっと焦がれているあの眩しい笑顔で。
そうだな。
僕にとっての帰る場所もここだけだ。
きっとこれからも、お互いにとって、お互いのいる場所が帰る場所になる。
リラにただいまを言って、おかえりと微笑んでくれる。
リラがただいまを言ったときは、僕が目一杯の愛で出迎えてあげる。
そして次の日は、リラが先に出かけるなら行ってらっしゃいと見送ってあげる。
僕が先に出かけるなら、行ってきますと言ってリラにキスをしたい。
そんな、今まさに現実に繰り広げられている僕とリラの二人の生活。
ずっと、そうしていくものと思ってた。
この時は、ただ目の前の幸せが永遠に続くものだと、漠然と信じて疑わなかったんだ。
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