【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第37章 ずるい
今日のレコーディングは、まずわたしのソロ曲のレコからスタートだ。
そのあと、藤さんのソロ、そして最後に2人のデュエットソングを録る予定。
藤さんが作ったわたしのソロ曲は、今までわたしが歌って来た中で最高難易度の難しい曲。
高音低音の上がり下がりが激しく、1曲の中で何度も転調を繰り返す。
さらにはテンポも速く、ブレスを入れるタイミングが無い。
何度も家で練習したけれど、決まって同じところのピッチがズレてしまうんだよね…
そんな不安を抱えながら、わたしはヘッドフォンを装着してレコーディングブースに立った。
「じゃあ、Lilaのソロ曲、 怪物 録っていきます」
「はい。よろしくお願いします」
何度か咳払いと発生トレーニングをした後、わたしがマイクに向かって発した声が、ミキシングルームに届く。
零に聴いてもらうんだから、頑張らなきゃ。
そう意気込んで、レコーディングがスタートした。
エッジの効いたボイスから入り、Aメロ、Bメロを歌い上げる。
そして、サビ。
そう。このサビがいつも1箇所だけピッチが外れる。
「すみません。止めてください」
「はい。」
案の定、いつものところでピッチを外したわたしは、レコーディングを止めた。
「すみません。もう一度頭からお願いします」
「はい。じゃあ頭から流します。」
このサビ、どう歌ったらここがずれずに歌えるんだろう…
それが解決しないまま今日レコーディング当日を迎えてしまったわたしは、どうにか録りながら解消するしかなかった。
藤さんなら、どうやって歌うんだろうか。
ふとそんなことを考えながらも、自分でどうにかしなくちゃ。と、わたしは納得が行くまで何テイクも重ねてレコーディングはいきなり時間が押してしまった。