【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第31章 警察官に相応しい彼女 ☆
たまらなく自分が嫌になりながら、とりあえず待たせている涼宮さんに一言伝えようと、また玄関に向かった。
「涼宮さん」
「降谷くんは?」
「リビングにいたみたいで、今支度してます。
多分もうすぐ来るかと…」
そう言うと、涼宮さんはわたしをじっと見つめながら言う。
「今の仕事のこと、降谷くんから聞いてる?」
「いえ…」
「そう。
…この間言ったこと、本気だから」
涼宮さんはわたしの目をまっすぐに見ながら言った。
「え?」
「警察官には、警察官にしかわからないことがあるの。
…私の方が降谷くんのことをわかってあげられる
大事な仕事の期間に寝不足にさせるようなこともしない」
リビングでの零との会話、聞こえてたんだ…
まるで、わたしが彼女失格だと言われている気分になり、思わず下を向いた。
「警察官は、思っている以上にハードな仕事なの。
肉体的にも精神的にもね。
それをあなた分かってないでしょ?」
「…」
なんて返して良いか分からずにいると、リビングから支度を終えた零が玄関にやってきた。
「お待たせ。悪いな、涼宮。」
「うん。…本当に疲れた顔してる。
大丈夫なの?」
涼宮さんが心配そうに零の顔を覗き込むと、零は優しく笑って言う。
「問題ないよ。」
まるで、わたしにいつも向ける、見る人を魅了するその笑顔を、他の人に見せて欲しくなくて
わたしは思わず零の名前を呼んだ。
「っ…零!」
「どうした?」
勢いよく呼んだものの、わたし以外にそんなに優しく笑わないで。
なんて、言えるはずもなく、必死に探して見つけたのは結局平凡ないつもの言葉。
「気をつけて…行ってらっしゃい」
「行ってきます」
零はいつものように優しく行ってきますのキスをした。
わたしが歌手ではなくて、警察官だったら
零のこと全部余すことなくわかってあげられたのだろうか。
そんなどうしようもないことを考えながら、涼宮さんと出ていく零の背中を見送った。
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