• テキストサイズ

【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】

第4章 君の近くに




僕の複雑な表情を見て、リラは慌てて弁解した。


「あ!違うの。
嫌な意味じゃなくて…
これまで付き合ってきた人の誰より、優しいから。」


そう言って笑った。

こんなの、普通だと思うんだけど。
むしろ、今までどんな酷い男と付き合ってきたんだ…

それに、どうしてあんなに必死になって歌うんだろう。
時折、どこか苦しそうに。


思えば僕は、リラのことは何も知らない。

これまでどんな人生を歩んできたのかも
家族は何人いるのかも
誕生日も、血液型も、好きな食べ物も


知っているのは、
クールぶってるけど実はそうじゃないこと
蜘蛛もランニングも嫌い
コーヒーは無糖ミルクなし
そして、歌に命をかけていること。


「君は、どうしてあんなふうに、身を削るようにして歌を歌うんですか?」


今度は僕が、リラの目を見ながら核心を突くようなことを聞いた。

リラは少しだけ考えた後、どこか悲しげに笑って言う。


「わたしには、歌しかないから。
歌えないわたしに、価値なんてないもの」


そう言ってリラはご飯も食べずに、シャワーを浴びて寝る準備を始めた。


歌えないわたしに、価値なんてない

そう言ったリラの少しだけ悲しげな顔が、しばらく脳裏に焼き付いて離れなかった。




Next chapter...


夜に駆ける/YOASOBI

/ 945ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp