【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第31章 警察官に相応しい彼女 ☆
零が公安警察の仕事をする日の朝、
零のネクタイを締めるのがわたしの最初の仕事だ。
「はい。出来た」
「上手になったな。ネクタイ締めるの」
「零と付き合うまでこんなことしたことなかったから!1年もやってたら上手になるよ!」
そう言って笑うと、零も同じように笑い返してくれる。
「いい子だ」
そして、わたしが大好きで仕方がない大きな手のひらで頭を撫でると、そのままわたしの唇にキスをする。
「…ん…」
小さく漏れたわたしの吐息を聞いた後、ゆっくりと唇を離してまたわたしの髪を撫でる零。
照れながら、零の目を見つめ返して尋ねた。
「行ってきますのキス?」
「じゃあ、行ってらっしゃいのキスは?」
そう言って、今度は零がわたしに向かって目を閉じる。
綺麗な顔立ち。
長いまつ毛は髪と同じ色をしている。
精一杯背伸びをして零の唇に触れるだけのキスをすると、零は嬉しそうに笑った。
そして、出かけるためにドアノブに手をかける。
「じゃあ、行ってきます。」
「いってらっしゃい。気を付けてね?」
手を振り、零が出掛けるのを見送った後、わたしは大急ぎで自分の支度をする。
今日はファッション誌の撮影と取材。
その後は音楽雑誌の取材。
夜はバラエティ番組の収録に参加。
復帰してから、毎日毎日忙しい日々を送りつつも、山岸さんが絶妙に仕事をセーブしてくれるおかげで、忙殺されて零との時間が取れない。と言うほどではない。
文字通り、仕事もプライベートも順調そのものだ。
「でも、前はそんなこと考えた次の月には歌えなくなったわけだし、油断は禁物だよね…」
独り言を呟きながら、わたしは山岸さんが迎えに来るまで、部屋の掃除と洗濯を鼻歌を歌いながら済ませた。
しかし、わたしのこの嫌な予想の通り、この一週間がまたとんでもないトラブルに見舞われる週になるのだった…