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【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】

第27章 母と娘




「日本武道館…」


ぽつりと呟いた僕をよそに、リラはシートベルトを外すと車から出た。

そして、RX-7の車体に背を預けながら、日本武道館と書かれた看板を見上げた。


僕も運転席から降りると、リラの隣に立ち同じようにそこを眺める。


「ここ、わたしが初めてお客さんの前で歌った場所」


そう言いながら、リラは目を細めて笑った。


「当時、すでに人気だったアイドルグループの追加メンバーのお披露目で。
何にも知らない15の少女が、たった一曲先輩たちと混じって歌うだけで、必死だった。
当日、公演が終わって緊張から解き放たれた安堵感で、過呼吸になるぐらい。
懐かしいな…でも、今も鮮明に覚えてる。」


僕は何も言わずにリラの肩を抱いた。

歌いたいと、震える肩が言ってるような気がした。


「周りを取り巻く環境の変化について行くのに毎日必死で、ひたすら前だけ見て走ってたら、気付けばここでライブをするのが当たり前になってた。
…また、ここで歌える日がくるかな」

「必ず、来るよ」

「うん。絶対またここに戻ってくる。」


リラは強い目をしながらそう言った。

あぁ、リラの歌声がまた聴けるようになるのはそう遠くないかもしれないな。

僕は、リラの表情を見ながら思った。
とても晴れやかで、美しい顔をしていたから。


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