【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第26章 謎に包まれた黒の話 ☆
次の日
わたしは久しぶりに事務所のある青山に足を運んだ。
ほんの少し前までは毎日のように来ていたこの場所が、今や初めて来る大都会のように思えて緊張してしまう。
事務所の近くにある個室カフェ。
よく打ち合わせなんかで利用したりするおなじみのお店のドアを押した。
どうやら山岸さんはまだ来ていないようだ。
「アイスティーください」
注文して席で山岸さんを待つ間、零からLINEが来ていることに気づいた。
『今日は早く帰れると思うよ』
その一言だけでバカみたいに嬉しくて、わたしはスマホをぎゅーっと抱きしめた後に返事を打つ。
「うん!じゃあ今日はビーフシチュー一緒に作ろ?
買い物はわたしが済ませておくから」
そう返事をすると、零から了解のスタンプが送られてくる。
幸せだ…
そう噛み締めていると、カフェの店のドアベルが鳴り、山岸さんが大慌てでわたしの席までやってきた。
「ごめんLila!待った?」
「ううん。大丈夫。
山岸さん、お疲れさまです。」
本当にいつも忙しい山岸さんは、常に何かしら急いでいる気がする。
コーヒーを注文した山岸さんは、ふぅ〜っと一息つきながらわたしの向かいの席に座った。
「午後から、ヨーコの歌番組の収録に急遽付き合うことになってね。
朝からバタバタだよ」
「そうなんだ。ヨーコちゃん新曲もうすぐだもんね」
そんな他愛のない話をして、山岸さんは運ばれてきたホットコーヒーをまだ熱いうちからズズッと啜った。
「で、話ってなんですか?」