【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第24章 この部屋で最後に ☆
けれど当の本人はと言うと…
「あ。このラグいいね。
グレーで可愛い」
「うん。気に入ったなら、それにする?」
「する!おしゃれな部屋になるよ!」
大型インテリアショップでそんな会話をしながら、お目当てのラグを買い物カートに入れた。
零と一緒に、引っ越し用の家具やファブリックを買いに来ているのだ。
流石にこの騒ぎの中、伊達メガネ一つで出歩くのはどうかな?と思っていたけど、メガネと帽子で案外バレないものだ。
逆にサングラスにマスクの方が、芸能人感がして見つかる気がする。
零の腕に手を回し、一緒に家具を見るのが思った以上に楽しくて幸せで、歌声を失って休業中のアーティストにはとても見えないと思う。
例えるなら、結婚を機に引退した歌手の第二の人生?
むしろ、ただの一般人のカップルに見えていたら嬉しいな。とすら思ってしまう。
ラグが置いてあるコーナーのすぐあとに、寝具コーナーに差し掛かり、わたしは零に尋ねた。
「ベッドは、新しいの買う?
今のベッド、零は狭い?」
わたしは、零とくっついて眠れるからセミダブルがむしろ嬉しいんだけど、わたしより身体が大きい零はどうだろう?と聞くと、零は微笑みながら言う。
「新しいの買ってもいいよ?
でも、サイズはセミダブルがいいな。
リラとくっついて眠れる、今のサイズが好きだから」
わたしと全く同じ事考えてた零が愛しくて、思わず零にぎゅっと抱きついた。
「零さん、大好き!」
「こらこら、週刊誌に写真撮られてまた好き勝手書かれるよ?」
「零がいるから怖くないよ」
そう。歌声を失った今のわたしは、逆にもう怖いものは零がいなくなることだけ。
それ以外は何が起こっても動じない、ある種無敵タイムだ。
「じゃあ、セミダブルの今の零の家にあるベッド持って行こう?」
「承知しました。お姫様?」
そんな冗談をウインクしながら言うわたしの彼氏。
様になるなんて、どこまで格好いいの…