【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第23章 The Little Mermaid ☆
「歌姫 Lilaの誰にも言えないヒミツ
実は政治家一家殺人の生き残りだった!!!」
そんな見出しから始まる週刊誌の記事。
そこに書かれていたのは、全てまぎれもない事実だった。
わたしが、必死に隠し続けてきた不幸な過去が詳細に書かれている。
どうして…今まで、誰にも言ったことなかったのに…
事務所にも、友人にも、仕事関係者にも、零にすら言ってない。
わたしの、暗い過去
見る見るうちに顔が青くなっていくわたしを見て、山岸さんがもう一度同じことを聞く。
「本当なのか…?」
事務所のみんなが全員、わたしに異様な眼差しを向ける。
同情のような、腫れ物に触るような、あの頃一斉に他人から向けられた目と同じ。
わたしは震える声で、あくまでも気丈を装って言う。
「…仮に本当だとしても、わたし音楽活動には関係ないでしょ?」
「いや、そういうわけにはいかないよ。
ここに書かれてる政治家一家殺人って、随分前に日本中の話題になったニュースじゃないか。
確か…当初は殺人やテロとして捜査されたが、実は妻の無理心中だったって言う…
マスコミに、有る事無い事書かれるぞ…」
山岸さんが心配そうに言うけれど、わたしは笑って返した。
「大丈夫だよ。だってもう15年も前の話だよ?
それに、今のわたしの名字は雨宮。
もうここに書かれてる家族とわたしは、他人なの!
…さ、打ち合わせしよ?マスコミに何か聞かれたら事実無根って言っていいから」
そんなふうに半ば強引にわたしは会議室の中に入った。
カタカタと震える手を、必死に握りしめて隠しながら。