第21章 君は僕のもの

安室side



ある日の夕方のことだった。

ポアロのバイト中、蘭さん、園子さん、そして赤井によく似た世良という女の子が放課後のお茶をしに来店。

それぞれコーヒーとサンドイッチを頼んだ後、彼女たちは机の上に買ってきたものを広げてきゃっきゃと楽しそうに話している。


「これ、キュンキュンしすぎてやばいよねー！」

「うんうん！
続き気になってたから最新刊読むの楽しみ！」


どうやら並べているのは今話題の少女漫画らしい。

恋愛創作物にテンションを上げているあたり、女子高生らしいな。
僕は正直、今まで全く触れてこなかったと言っても過言では無いジャンルだ。

映画だって、アクションやミステリーが好きだし、漫画は基本的に読まない。
僕の本棚にある文庫本には、ラブストーリーの小説は一冊もない。

ただ、こんなに楽しそうにしてるんだから、きっと女性は好きなんだろうな。

リラも、こういうのが好きなんだろうか。

そう思いながら、蘭さんと園子さんの尋常じゃない盛り上がりっぷりに僕はサンドイッチを提供しながら会話に入った。


「そんなに面白いんですか？その漫画。」

「はい！教師と生徒の純愛モノで、明日からこれのドラマが始まるんですよー！」

「そうそう！Lilaが月９初主演なんだよね！
相手はあの川Pだし♪」


それを聞いて、僕の時間が一瞬止まる。


え…純愛モノの…主演！？

そして次に僕の思考が停止した。
確かに数ヶ月前からドラマの撮影がどうとか言っていたけど、恋愛ドラマでしかも主演って…


「聞いてないぞ」


思わずポロッと出たその言葉を聞いて、僕の同僚の元彼女が不思議そうにこちらを見た。