第4章 第四章音楽の申し子
大いなる誤解を受けながら事務所を出て裏口に向かう。
「マスターお勤めご苦労様です」
「毎日出迎えは必要ないんだけど」
「私が好きでしております」
私がプロデューサーの仕事を受けてから有利は毎日の用意迎えに来る。
「少々お疲れですね」
「ああ、少し」
久しく疲れてしまった。
「消しましょうか?音楽」
「そのままにしておいて…この曲はお気に入りなんだ」
今でも優先ラジオで流れるこの曲はRe:valeのデビュー曲でもあり、私が彼等の為だけに作った曲。
作詞も手掛けたんだ。
「マスター、差し出がましいようですが…本当にお会いにならないのですね」
「今の私は合う資格がない。それに彼がまた接触して来たら厄介だ」
既にトップアイドルとして活躍する私は彼等を応援しているけど、目の前に出る訳に行かない。
「彼等の成長の妨げにはなりたくないし邪魔したくない」
「邪魔になるとは思えません。むしろ喜ぶでしょう」
「だが私が何をしてやれようか…既に二人は大きくなった。だからこそこれ以上傍にいる必要はない」
子供は何時か羽ばたく物だ。
雛鳥は巣立ちが早いのだから、私もいい加減雛離れをしなくてはならないのかもしれない。
「子離れできていないなんて情けない」
「マスター…」
「少し眠る」
「かしこまりました」
会ってしまったらきっと我慢できなくなる。
本当は会いたくて仕方ない。
もっと傍にいて、彼等が輝くのを傍で見たかった。
でもできなくなって、悲しくて悔しくて切なくて。
どうしようもない気持ちに蓋をしなくてはあらない。
傍にいなくても彼等を見守りたい。
それが彼との約束だ。
私の方から会いに行くことはしない。
ただ彼等を遠くから見守る。
それが私の愛情の形なのだから。