第2章 新プロデューサーはイケメン
かくして臨時プロデューサに就任した私はスーツを着て出社することになった。
…のだが。
「この人痴漢です!」
「違う、俺じゃない」
「嘘よ。私のスカートに手を入れてファスナーを下したわ!最低!」
「だから違うと言っているだろ!」
満員電車で痴漢に間違われたマスクをした男性。
うん、現場を見ていたので解る。
そして逃げようとする男発見。
「お嬢さん、彼は痴漢していませんよ」
「でも…」
「彼は手すりをずっと持っていましたし…この距離からは不可能です。何より外は雨…彼は手が濡れています」
「あっ…」
「彼が電車に乗る前から雨が降っていたのでしょう。だから濡れていなければ不自然…そうですよね?」
「ひぃ!」
犯人を睨みつける。
「可憐な乙女に感心しません。もうすぐ駅に着きますのでご同行願います…ああ、逃げても強制連行しますので」
「くっ…」
駅に到着してすぐに私は痴漢を突き出した。
「ありがとうございます」
「今度から気をつけてくださいね」
「はい…それから。すいません」
犯人と間違われた人に謝る彼女。
「いや、誤解が解けたのならいい」
彼も悪い人ではないようだ。
謝れば許してくれるような懐の深い人だ。
「アンタ、悪いな。助かったよ」
「いいえ、私は失礼します」
早く急がないと。
この時私は知らなかった。
電車で痴漢に間違われた男性が…
「楽!ごめん…遅くなって」
「いや、時間通りだ。それよりも今日だよな」
「新しいプロデューサーさん。どんな人だろうね?」
「真面な奴だといいけどな」
まさか私がプロデュースするタレントだとは知らなかった。