第55章 暗闇でも見つけて
ミラは黙ってドラコに手を引かれながら着いて行った。ドラコは時々止まって周りを見回し、誰もいないかを確認しながらまた進んだ。
(どうしよう…ドラコにも知られた? どこへ行くんだろう…なんて言われる? 軽蔑した?)
ドラコに掴まれている手をぼんやり見ながら、ミラは考えていた。そのせいで、自分がどこへ連れて行かれているのか気にも留めなかった。だたほんの少し、安心を感じていた。あのまま誰も来なかったら、自分はネビルに何をしていたのだろうと思った。
二人は歩いたり止まったりを繰り返しながら、湖の近くまでやってきた。木がまだ少し多く並んでいるところまで来ると、ドラコはようやくミラの手を離した。何故かそれが、名残惜しいとミラは思った。
「らしくないな、グローヴァー。ロングボトム相手にあそこまですることないんじゃないか?」
「----前にネビルに呪いをかけたくせに」
「昔の話さ」
ドラコは口元だけで笑い、ミラに向き直った。
「あの物覚えの悪いバカに忘却呪文を使おうとしたのか?」
「----だったら何?」
ミラはドラコを静かに見据えた。薄いグレーの瞳が、驚きもせずにミラを見返していた。
「グリフィンドールの生徒には見えないぞ、お前」
「そんなの、入学した時からわかってる」
「アイツのせいか? ----トム・リドル」
ピクッとミラはその名前に反応した。
「例のスリザリン生の正体だ。まさか、今年もその名前を思い出すなんてね----周りは呑気なものだ、イケメンだのと持ち上げてるが、その正体を知れば恐怖する」
「私は、アイツが怖いんじゃない」
ミラははっきりと言った。ドラコにまでトムのことで怖がっていると思われたくなかった。