第51章 占い学
「犬を見たくらいで死ぬなんて大袈裟だし----もし結果がそうだとしても、ハリーなら乗り越えられると思いますけど」
ざわめきの中に一瞬の静寂が入り込んだような感覚。みんなが驚いたようにミラを見ていた。だがそのすぐあと、ハーマイオニーが動いた。彼女は席を立って、静かにトレローニー先生の椅子の後ろに廻った。
「死神犬には見えないと思うわ」
と、容赦なく言い放つ。
トレローニー先生はハーマイオニーをじろりと睨みつけ、まるで汚れでも見つけたような目つきで言った。
「こんなことを言ってごめんあそばせ。貴方にはほとんどオーラが感じられませんのよ。未来の響きへの感受性というものがほとんどございませんわ」
そう言い終えると、先生の目はすぐにミラの方へと移った。はっきりとした敵意を含んだ視線だった。
「そして、貴方も……ええ、そう。懐疑の念に心が染まりすぎています。第三の目は閉じきって、固く錠をかけたようなもの。悲しいことですわ」
皮肉混じりの声に、教室の空気がまた少し冷たくなった。けれど、ミラはそのまま黙って立ち、冷たい目でトレローニー先生を見ていた。
「こうやって見ると、グリムらしく見えるよ----でも、こっちから見ると、むしろロバに見えるな」
と、シェーマスが両目をほとんど閉じたまま言った。
「僕が死ぬか死なないか、さっさと決めたらいいだろう!」
誰もハリーを真っ直ぐ見ようとはしなかった。ミラ以外は。
「今日の授業は、ここまでにいたしましょう」
と、トレローニー先生が霧の彼方からのような声で言うと、みんなは無言で片付けの作業を始めた。片付けが終わると、四人は口を閉ざしたまま教室を出ていき、次のマクゴナガル先生の『変身術』の教室へと向かったのだった。