第1章 居候と孤児【賢者の石編】
ダドリーの誕生日が近づくにつれ、ハリーはますます機嫌が悪くなった。日増しにダドリーの悪口が増え、ミラは毎年のように聞いては同情し、その悪口に乗っかったりもした。
そしてダドリーの誕生日当日、ミラは孤児院の仕事を全て終えるとハリーの家に向かった。あくまで訪ねず、遠くから覗く程度だった。遠くからでもダーズリー家の車がないのが分かると、ミラは隣の家のフィッグおばさんという家を訪ねたが、なんと不思議なことにハリーはいなかった。
フィッグおばさんは骨折した足を痛そうに引きずっており、ミラは早々におじゃました。ミラもフィッグおばさんの家の、キャベツみたいな匂いや猫の話は苦手だった。
確認でダーズリー家のベルを鳴らしたが、誰もいなかった。珍しくいないハリーに、ミラは何か良いことがあったかもしれないと思った。ハリーがいないと特にやることもなく、ミラはいつもの公園で時間を潰し、夕食前には孤児院に戻った。
しかしハリーは次の日、学校にこないばかりか、夏休みが始まる前日になっても現れなかった。これは何かあったと思いダドリーの教室に行けば、滝を破るかの如く、ミラの向かう先にクラスメイトたちは彼女を避けた。
自分の元へやってきたミラを見たダドリーは震え上がり、ヒクヒクと頬を引き攣らせた。
「ハリーはどうしたの?」
大量の冷や汗を描いたダドリーは、ミラの質問にドキリとした。うわずりそうになる声を必死に抑え、しかし目は合わせず答えた。
「あ、あいつは家だ!あいつのせいで僕は酷い目にあったんだ!」
「…そんなことはどうでもいい、ハリーは?」
「…ぱ、パパの言いつけで…」
「……そう」
ミラはダドリーの机をひと蹴りすると、早々に教室から出た。机を蹴られたダドリーの顔は引き攣り、周りのクラスメイトも息を呑んだ。しかし周りからどう見られようとも、ミラはハリーのことが心配だった。
(ハリー…また閉じ込められているんだ---無事だといいな)
ハリーがダーズリー家で時々物置に閉じ込められていることミラは知っていた。しかし今回ここまで長いのは初めてで、やはりダドリーの顔に一発拳を決めた方がよかったかもしれないと思った。