第2章 宛名のない手紙
すると突然玄関のドアが慌ただしく開き、中からダーズリー家とハリーが荷物をまとめて出てきたではないか。突然のことにミラはびっくりしたが、ハリーの姿を見つけると、ミラは嬉しさのあまり名前を呼んだ。
「ハリー!」
ハリーは自分の名前を呼ばれ、声を方をすると、パッと嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
「ミラ!久しぶり!」
「どこか行くの?」
「ちょっと…」
「喋っとらんとさっさとお前も車に乗るんだ!お前もさっさと立ち去れ!」
ハリーとの会話は、ダーズリー家のバーノンによって遮られた。ミラはバーノンが何の理由もなく怒鳴ることに眉間に皺を寄せた。しかしあまりの剣幕にどう答えて良いか分からず、ハリーを心配しつつもその場から立ち去った。
離れたところからハリーを見ていると、ダーズリー家は車に乗り込むと、一目さんに家を離れていった。全く訳のわからない事態に、ミラは悩んだ。
それでもハリーに一目会えたことはよかったと思った。相変わらずクシャクシャの髪に、いつものメガネ、ダボダボの服装だったが、ハリーは元気そうだった。
ミラは踵を返し、早くハリーが帰ってきますようにと、夕暮れの一番星に願いを込めた。
・・・・・
学校からの手紙はハリーと会ったその次の日に届いた。
迎えが明日の朝早く来ると言うことで、食堂にある暖炉のところで待っていてほしいと言う不思議な内容の手紙だった。
しかし不思議だったのはそれだけではなかった。何ともう一通自分宛に手紙が届いていた。しかしそれに宛名はなく、ヘンテコな鍵とメッセージカードだけが入っていた。
『大切に使いなさい』
たったそれだけだった。ミラは全く意味がわからず、悪戯かと思ったが、送られてきた手紙の質は、学校のものより遥かに上質だとミラでもわかった。メッセージに書かれた字も綺麗で、匂いを嗅いでみると、やはり上品な香りがしたのだ。
その日はミラ中々眠れず、ワクワクした気持ちを抑えようとしたが、明日のことを思うと難しいことだった。
(ハリー…誕生日おめでとう)
本人には会えなあかったが、ミラはハリーの誕生日を心の中で祈り、目を閉じた。