第11章 みぞの鏡
ミラは完全にドラコを無視していた。あの林での出来事で、ミラは全くドラコのことを話題にもしなければ、魔法薬では一緒の教室にはいないかのように振る舞っていた。
ハリーいわく、ミラは本当に相手のことが嫌いになると相手の存在を完全に無くすとロンとハーマイオニーにコソッと話していた。ハリーとロンがドラコの悪口を言ったとしても、「そんな人いたっけ?」と言う始末なので、きっと自分たちの知らないどこかでドラコがミラに何かしたのではと推測した。
魔法薬の授業が終わったあと、地下牢教室を出て行くと、行く手の廊下を大きなモミの木が塞いでいた。木の下から二本の巨大な足が突き出していて、フウフウいう大きな音が聴こえると、ハグリットが木を担いでいるのだということがすぐにわかった。
「やあ、ハグリッド、手伝おうか」
と、ロンが枝のあいだから頭を突き出して尋ねた。
「いんや、大丈夫だ。ありがとうよ、ロン」
「すみませんが、そこ退いてもらえませんか」
後ろからドラコの気取った声が聞こえた。
「ウィーズリー、小遣い稼ぎかい?君もホグワーツを出たら『森の番人』になりたいんだろう---ハグリッドの小屋だって君たちの家に比べたら宮殿みたいなものなんだろうねえ」
ロンがまさにマルフォイに飛び掛かった瞬間、スネイプ先生が階段を上がって来た。
「ウィーズリー!」
ロンはマルフォイの胸ぐらを掴んでいた手を離した。
「スネイプ先生、喧嘩を売られたんですよ」
と、ハグリッドがヒゲもじゃの大きな顔を木のあいだから突き出して抗議した。
「マルフォイが、ロンの家族を侮辱したんでね」
「そうだとしても、喧嘩はホグワーツの校則違反だろう、ハグリッド---ウィーズリー、グリフィンドールは五点減点。これだけで済んで有り難いと思いたまえ。さあ諸君、行きなさい」
と、スネイプ先生はよどみなく言い放った。
マルフォイ、クラッブそしてゴイルの三人はニヤニヤしながら乱暴に木の脇を通り抜け、針のようなモミの葉をそこらじゅうに撒き散らして行ってしまった。
「覚えてろ」と、ロンはマルフォイの背中に向かって歯ぎしりしました。
「いつかやっつけてやる」
「二人とも大嫌いだ、マルフォイもスネイプも」
ハリーは去って行ったドラコたちに向かって言った。