第6章 贈り物と日輪刀

その頃実弥は小芭内と共に商店が立ち並ぶ通りに到着し、一軒一軒店を覗いては探し人である風音の姿を探していた。

しかしどういう訳か食材を売っている店の店主がどこも不在にしている……かと思えば、生暖かい視線を実弥へと送りながら続々と帰って来る。

「何だァ？俺の顔に何か付いてんのか？」

腕で顔を拭っても何も付くはずがなく、こちらもこちらで首を傾げながら歩いていると、前から見覚えのある着物の裾をチラチラとひらめかせながら歩いてくる食材……元言い風音がフラフラと歩いている姿を発見した。

「不死川、あれは柊木ではないのか？財布を忘れて出て行ったと聞いていたが……食材を山ほど抱えているぞ？」

「俺の稽古見てそのまま出てったから財布は持ってねェはずだがなァ……てか財布持っててもあんな大量に買うような奴じゃねェ」

再び首を傾げながら不安定に右に左にと歩く風音に駆け寄り食材をガサリと持ってやると、やはり風音の顔がお目見えした……困り顔の風音が。

「お前、財布持ってなかったろ？この食材どうしたんだァ？」

「あ、実弥さん……お財布持ってなかったから後で買いに戻りますって甘味処の方に言ったら、いつも実弥さんに贔屓にしてもらってるからって頂いて……それを見聞きしていた他のお店の方々も続々とこうして食材を分けてくださったの。すみません……」

財布を忘れるという失態を冒したものの、甘味や食材に関しては明らかに店主たちの好意なので実弥としても叱れない。
きっと何度か受け取れないと断ったのだと、今の困った表情を見れば一目瞭然だから。

「あ"ぁ"……んでさっきから店主が俺見て笑いながら店戻っていってたのかァ。謝ることじゃねェよ……財布忘れたのはあれだが。せっかくもらったんだァ、しょぼくれてねェで礼言って帰んぞ。伊黒も来てくれてんだからな」

伊黒……と聞いて姿を探すと、少し離れた場所で穏やかな笑みを浮かべて待ってくれていた。

「伊黒さんまで？！帰り遅くなってごめんなさい。お礼言って帰りましょう！あれ？前田さんは？家にいるの？」

こうして風音は食材たちを実弥や小芭内に持ってもらうのを手伝ってもらい、店主たちに礼を言ってようやく家へと帰ることが出来た。