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うっかり亡者になりました

第1章 うっかり亡者になりました



 桜が満開になり、普段は生真面目な日本人たちが
我を忘れて飲めや歌えやの大騒ぎをする4月。

 1年の間でもっとも、心が躍る季節だと思う。
だれもが、笑顔になる4月。

 俺はうっかり亡者になった。
17歳、男子高校生これからが人生パラダイス!
のはずだったのだが、亡者になってしまった。
 彼女を作ることもなく、もちろん女性といい感じになることもなく
俺の人生はあっさり終わりを告げてしまった。

 イジメにあいました・・・とか
交通事故で・・・とか
大病を患って・・・とか

 そういう内容で亡者になったのなら
まぁ、俺も納得できる。

 が、残念ながら・・・全く違うのだ。
自分でも、なぜ亡者になってしまったのか分からない。

 それでも100歩譲って亡者になったとしよう。
しかし、今の境遇には納得がいかない。

 現世にいたころ。といっても数ヶ月前までの話だが
誰かを妬んだり、イジメたり、大きな嘘をついたりしたことはない。
だから、死んだら天国に逝けるはずだろう!
 
 しかし、何故かおれは地獄にいた。
それも、閻魔大魔王の前でさばきを受けている。

 隣にいる細身ながらも体躯の良い男は、その恐ろしい瞳で
俺を見たあと、手元の書類に目を通している。

「困ったな〜、こんな理由でここにこられても・・・
落とせる地獄がないよね。鬼灯くんどうしよ〜」

 閻魔大王はほとほと困り果てたといった感じで
傍にいる男に話しかけた。男はどうやら鬼灯という名前らしい。
鬼灯と呼ばれた男は、書類から視線を上げ、俺を見た後・・・

「アホですね」

そうひとこと、俺に向かって言い放った。

「なっ!!」

 バリトンボイスで言い放ったひと言に、俺は思わず声を上げてしまった。
 第一印象・・・最悪。

 これが、俺・・・安倍隼人と閻魔大王第一補佐官・鬼灯様との
最初の出会いだった。
 




 

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