第20章 そんな事、頼んでないのに
–焦凍side–
「………。」
黙って話を聞いていると
ふとあくあと目が合って
“分かった”
あくあは静かにそう言った
でもそんなあくあの表情は
全然納得しているようには見えなかった。
一昨日のあの事件の後、
俺と爆豪と緑谷は突然呼び出されて
あくあのサポートをするように頼まれた。
暴走を止めるには
個性から気を逸らさなければいけない、
だから気を逸らしやすいようにあくあと
関わりの多い俺達3人が選ばれたらしい。
『…3人とも、改めてよろしくお願いします!』
そう言って頭を下げたあくあ。
あの時の事……
今すぐにでも言うべきだろうか
あの時の、10年前の事は
体育祭が終わってから伝える
そう決めたけど、やっぱり
あくあには伝えておくべきな気もする
でも、逆に伝えない方が
いいのかもしれないと思うこともある
(……伝えるべき時は今じゃない、よな。)
自分の心の中で結論を出して
あくあの方に視線を向戻した
「あくあ。俺ら三人共、嫌々引き受けた訳じゃねぇ。お前の力になりてぇから引き受けたんだ。だから頭を上げてくれ」
『焦凍くん…』
「そうだよ、困った事があったら遠慮せず頼ってね!」
「次は俺が守ってやるよ」
俺たちの言葉を聞いたあくあは顔を上げると
『…ありがと』
微かにニコッと笑ってそう答えた。