第6章 【第四講 後半】マヨネーズは万能食だけど恋の病には効きません
一回表、集英高校の攻撃から試合は始まる。
銀魂高校のピッチャーは土方。
「L・O・V・E! ヒ・ジ・カ・タ!」
○○は声援を送る。そこは観客席ではなく、ベンチの横。
格好はチアでも、○○はあくまで野球部員代理として参加している。
「L・O・V・E! ハ・セ・ガ・ワ!」
キャッチャーの長谷川は手を上げて○○の声援に応える。
「打っち取れー、ひ、じ、か、た!!」
○○は声を上げる。
片や、甲子園出場経験もある強豪高の一番打者。
片や、野球経験一週間、しかも野球経験ゼロの銀八が指導した「それ野球なん?」とツッコまれてしかるべき指導を受けた土方。
簡単に打ち取れるはずがない。と思いきや、一球目は空振り。
「いいぞ! いいぞ! 土方!!」
○○はポンポンを天高く上げる。
さらに二球目も空振り。
「ナイスだ! ナイスだ! 土方!!」
土方はニヤリと笑っている。
このまま三振、一人目アウト――とはいかず、相手打者がタイムを要請した。
マズイ、と○○は顔をしかめる。
思ったとおり、打者は審判に対しボールを調べるように要求。
ボールにはマヨネーズがヌルヌルに塗られていた。
そのため球筋が変化し、打者は見たことのない変化球に翻弄されていた。
「言いがかりはよせェェェ! マヨは土方くんにとっては体の一部なんだから、自由に使っていいものデス!」
○○はベンチから声を上げる。
マヨネボールは土方が勝手に仕出かしたことではない。
監督代行の銀八が率先して使わせた。
銀魂高校の野球部員(本家野球部員は除く)も全員知っており、むしろそれで八回くらいまで抑えようという作戦を立てていた。
「嘘つけ! 明らかに塗りたくってるだけだろーが!!」
「貴方だって、マヨネーズ食べたら体の一部になるでしょ!」
「そりゃそうだ! マヨネーズは貴重な栄養だ!」
「ホラホラ! 貴方自身で認めてるじゃない!」
「それとこれとは話が違げェ!!」
マウンドとベンチで繰り広げられる、集英高校一番打者と○○の言葉の応酬。
「両者、私語は慎みなさい! 今すぐ退場させるぞー!」
審判からの警告に、○○と打者は口を噤んだ。