第5章 【第四講 前半】野球の話は後半から。
「内側はいーんだよ。どーせ見えねーんだ」
「見えてんじゃん!!」
「見えてるうちに入んねーよ、これくらい」
「入るわ!!」
怒りに任せ、○○は椅子を蹴り飛ばす。
「いで!」
その椅子は不幸にも山崎に直撃した。
「赤なんて派手な色、不良の始まりみたいなモンでしょ」
「赤は俺のラッキーカラーだ。マヨネキャップの色だ」
「だったら、乳白色にしなさいよ。マヨにまみれてるみたいに見えるよ」
「んな色、着てるか着てねーかわかんなくなるだろうが」
「わかれよ!!」
繰り広げられる言葉の応酬に、風紀委員達はオドオドと見守るばかり。
委員長の近藤も為す術なく、ただただ二人の間から飛ばされる言葉に合わせて視線を漂わせていたが、
「土方くんみたいな人には任せられません!」
突然○○に視線を向けられ、ギクリと身を震わせた。
「上等だ。女だからって、容赦しねェぞ」
土方は廊下側へとズカズカと足を進める。
「オ、オイ、トシ、暴力はいかんぞ」
近藤は冷や汗を垂らす。
「売られた喧嘩は受けて立つのが私の信条です」
「待、待てって。風紀委員の会議の席で暴力沙汰なんて、生徒に示しがつかんぞ」
近藤の願い虚しく、戦闘開始。
「じゃんけん、ポン!!」
「よし!!」
○○は勝利の拳を突き出す。
「ということで近藤さん。正門は私が担当します」
「チッ……」
土方はがくりと床に膝をついて舌を打つ。
「え、いつの間に割り振り決めに戻ってたの?」
近藤は頬を引きつらせた。
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