第5章 【第四講 前半】野球の話は後半から。
「来週から二週間、風紀取り締まり強化期間だ。気を引き締めて任務に当たれよ」
「はい!」
風紀委員の面々から声が上がる。
風紀取り締まり強化期間とは、朝の登校時間に風紀委員達が校内および学校付近で見廻りを行い、不逞の輩――校則違反者がいないかどうかをチェックする期間。
日常的には教師数人が門の前でチェックをしているのみだが、年に数回は風紀委員も交え、範囲も広げて目を光らせる。
「担当区域の割り振りを行う」
近藤の言葉に合わせ、山崎が黒板に校舎の見取り図を張り出す。
「まずは正門だ。ここは一番の重要ポイントだ。きちんと任務をこなせる者に任せたい」
土方が挙手し、立ち上がった。
「トシは正門希望か」
「ああ。だがその前に近藤さん」
「なんだ」
「俺が提案した件はどうなったんだ」
「ああ、あれか」
近藤は顎に手を当てる。
長髪、茶髪、ヒゲ、グラサン――
その他諸々の禁止事項を校則に加えようと、以前、委員会議で土方は提案していた。
校則は勝手に変えられないため、検討した上で職員に掛け合うと近藤が引き取り、そのままになっている。
「うーん、やはり、校則を変えるというのはなァ……」
近藤は校則の改正には反対の立場にいる。
「そうですぜ。いくら風紀委員でも、生徒の自由を奪う権利はありやせんぜ」
珍しく、沖田が真っ当な自分の意見を述べる。
沖田も近藤と同じく、校則改正には反対の態度を示している。
それもそのはず。近藤はヒゲを生やし、沖田は茶髪であるからだ。