第4章 【第三講 後半】そして棒倒し……
「アイツがいたって、空気が重たくなるだけだろ。あんな根暗」
銀八の言葉を耳にし、再度、○○の中にメラメラと殺意が沸き上がる。
○○は銀八の背中に松葉杖の切っ先を向けた。
――この真っ白な白衣に醤油の染みを作ってやる!!
ささやかな嫌がらせ。
不穏な殺気に気づいた銀八は、○○の指が引き金を引く前に振り返った。
「……ッ!? ○○!? 何してんだ!」
背中に突きつけられていた切っ先に、銀八は青ざめる。
「それ、改造銃だろ!? 俺を殺す気か!? なんで!?」
その先端から弾丸が飛び出したのを、銀八はその目に見ている。
先程、巨大ロボを止めた戦士の姿とは思えない程に怯えに怯え、新八の後ろに隠れた。
「ちょっ、僕を盾にしないで下さい!」
銀八と新八、押し合いへし合い、互いを盾にしようと揉めている。
「ヤダな。こっちは醤油ですよ。こんな距離から撃ったら、銀八先生の体、貫通しちゃいますよ。そんなことするわけないじゃないですか。ホラ――」
ズキューンと、銀八と新八の頭のちょうどド真ん中を、弾丸は通り抜けた。
二人は顔を青ざめさせて固まっている。
「……アレ?」
○○は手元を覗く。
「そいつァ、右の杖だぞ」
製作者、源外の声。
先程、高杉から手渡された時、うっかり左右を持ち間違えていたようだ。
「危険物だから、気をつけてたはずなんだけどなァ……。間違えちゃった」
てへへと、○○は舌を出す。
「間違えちゃったじゃねェェェ!!」
銀八と新八のハモリ声が、晴天の空へと轟いた。
【第四講 前半】へ続く→