第4章 【第三講 後半】そして棒倒し……
「止まった……」
校庭の真ん中で、ロボットは動作を停止した。
胸を撫で下ろすと同時に、○○は傍らに目を向ける。
○○の横で、銀八とロボットの戦況を見ていた男子の背中が目に映る。
「高杉くん」
振り返った高杉は、○○に松葉杖を差し出した。
「ほらよ」
「え? あ、ありがとう……」
あの状況の中、高杉は○○を避難させるだけでなく、放り出していた松葉杖までも回収してくれていた。
○○と高杉がいるのは、ロボットから何メートルも離れた校舎の脇。
ロボットの目が光った瞬間、○○は高杉に抱えられてその場から引き離された。
○○は松葉杖を両脇に挟んで立ち上がる。
「歩けんのか、その足で」
○○は目を見開いた。
「気づいて、たの……?」
「気づかねーわけねーだろ」
ロボットが繰り出したパンチを、○○は間一髪で回避した。
○○の反応がそんなに鈍いはずがない。その時すでに、○○の足は限界を迎えていた。
それに、足が動くならば、○○は率先して土台の役目を担うはずだ。傍観しているはずがない。
もしも、銀八が任務に失敗し、再び攻撃を受けていたら、○○はペシャンコにされていただろう。
だから、高杉はロボットの手が届かないところまで○○を運んだ。
「仲間想いも大概にしろ」
新八を助けに向かった時に、○○はかなりの無理をしていた。
すぐくっつくように折ったと言うのは嘘ではないが、すぐ走れる程、軽いケガでもない。
何でもないように新八に告げたのは心配させないためだ。
高杉は○○を残して歩き出した。
「どこ行くの?」
「ヤボ用だ」
校舎の角を曲がり、高杉は姿を消した。
高杉の背中を見送った後、○○はポツリと呟いた。
「また助けられちゃった」
以前、バナナの皮ですってんころりんした桂に襲いかかられた時、○○は高杉に窮地を救われた。
それ以来、○○は高杉を意識している。
体育祭はサボるのではないかと思っていたが、姿を見つけて心は躍り上がった。
競技には気まぐれにしか参加していなかったようだが、つい、その姿を捜していた。