第184章 涙の種類⦅虎杖悠仁⦆
男だったら泣くな。
小さい頃から、爺ちゃんに何度も言われた言葉。
でも人は悲しかったり、嬉しかったりすると自然と涙が溢れるもので。
爺ちゃんの【死】に直面した時も涙が溢れた。
【男だったら大切なヒトを悲しませるな】
中学の頃、爺ちゃんは反抗期を迎えた俺にそれだけ言った。
あの時、爺ちゃんの顔をちゃんと見る事はできなかったけど、今思い返せば、いつもの覇気は感じられず、どこか寂しげな強がった声だった気がする。
反抗期も落ち着いた頃、俺は高校へ入学し、爺ちゃんは入院した。
俺にとって大切な人は爺ちゃんだけだったから、1人で過ごす家は とても寂しく感じた。
だからなのか、オカケンに入部し、できるだけ夜も誰かと会える環境にした。
夜のひとりぼっちは淋しいから。
だから高専に転入するって話を聞いた時は、素直に嬉しかった。
寮って事は常に誰かしら居るし、ひとりぼっちじゃないって思えたから。
高専に入って、伏黒や釘崎、なな と過ごす何気ない日が日常に変わり始めた頃、俺たちに少年院の任務が入った。
突然現れた特級相手に、俺が時間を稼ぐと言ったら、なな は珍しく大きな声を出して怒ってた。
『そんなの駄目! 皆で逃げるの!』
「何で分かってくれねェんだよ!
このままじゃ皆 死ぬんだよ!」
片手を失い、死ぬかもしれない恐怖に、つい大きな声を出してしまった俺に、なな は体をビクッと大きく震わせて、目いっぱいに涙を溜めて俺を見た。