第182章 否定しないで⦅五条⦆
『…悟、楽巌寺学長の件ありがとう。
……やっぱり私なんかじゃ悟と釣り合わないのかな………』
目の前に置かれたコーヒーを見つめたまま、なな が言うと「は?」と五条が低い声を発した。
「前から気になってたけど、【私なんか】とか【釣り合わない】とか なんなの?」
怒っているトーンに なな は五条を見る事ができず、黙ったままコーヒーを見つめた。
「 なな も階級とか気にするの? 僕と付き合ってるのは、僕が特級だからなの?」
『違う!』
パッと顔を上げ、なな は五条を見た。
「だったら【私なんか】とか言わないで。
なな の事が好きな僕の気持ちまで否定されてるみたいで嫌だ」
拗ねているような言い方の五条に、なな は自分自身を否定する事が、自分を好きで居てくれている五条を否定してしまう事に初めて気がついた。
『分かった。ごめんね?』
五条を見て謝れば、五条は「うん」と いつも通り微笑んで返事をした。
「僕は なな の全てが好きなんだよ」
なな を ぎゅーっと抱きしめながら、五条は優しく呟いた。
『ありがと、悟』
五条の大きな背中に腕を回し、なな も ぎゅ と抱きしめた。
***おわり***