第151章 付き人の苦労⦅虎杖ver⦆
怒りを含んだ声色で楽巌寺は答えた。
『なぜ、とはどういう事ですか?』
シラを切る なな 。
「虎杖悠仁。少年院で自死したと報告が届いているが?」
『見ての通り彼は生きています。
貴重な術師のタマゴが生きて居たのです。喜ぶべきでは?
それとも何か不都合でもありますか?』
「………」
なな を睨み付ける楽巌寺だが、なな は恐れもせず続けた。
『五条さんと交わした約束を覚えていらっしゃいますよね?
彼の秘匿死刑は "宿儺の指を全て取り込ませてから" だったはずです。
それを少年院の任務で体(てい)よく殺そうとしたのは どこのどちら様でしょうね?』
⦅ なな さんが怖い… ⦆
穏やかな表情と声色で楽巌寺に意見する様子に、虎杖は青ざめた。
『若い子を潰すより育てる努力をされるべきです』
「小娘ごときが知った口をっ!」
楽巌寺の圧に虎杖は ヒエッ となったが、なな は平気そうだ。
『私は五条さんの後輩育成論に賛成です。
万年人手不足の術師のタマゴを、制御できない呪いだから、とか、特級呪物が呪肉したから、と言う理由で殺す方法しか考えないやり方はもう古い。
それだから京都校は学生が育たないのですよ』
冷たい視線を向け、楽巌寺に言い放つとスタスタと歩き出した。
「小娘めっ」
『あぁそぅそぅ。もしまた虎杖を殺そうとするようであれば、私は上層部に噛み付きます』
にっこり笑って それだけ伝えると、なな は足を止めることなく その場を後にした。