第148章 雨⦅伏黒⦆
ボロボロの伏黒だったが、呪力を練り上げると宿儺は歓喜した。
伏黒は呪文のようなものを唱えたが、最後まで言わず呪力を体内に留めた。
スー…、と虎杖の体から刺青のような模様が薄くなっていく。
「長生き、しろよな…」
そう言っていたは その場に倒れた。
伏黒は空を見上げ、唇を噛み締めた。
そんな2人の様子を なな は何も出来ずにいた。
雨粒を遮る事もせず、なな と伏黒は雨か涙か分からない水分が頬を伝った。
なな は もともとキライだった雨の日が更にキライになった きっかけだった。
ザー… ザー…
目の前で虎杖が倒れた あの日と同じように辺りは薄暗く、雨が地面を濡らしている。
寮に戻りたいが傘を持ってきて居なかった なな は学生玄関に立ち、ぼーっと空を眺めていた。
「傘、忘れたのか?」
なな の隣に立った伏黒が傘を広げて言った。
『うん。持ってこなかった』
「一緒に帰るか?」
黙ってコクンと頷き、伏黒の傘に入れてもらう。
『…私、雨ってキライ』
黙って歩いていたが、なな が口を開いた。
察しの良い伏黒は黙って なな の話を聞いたあと、「俺も雨はキライだ。でも」と言って続けた。
「こうやって なな の隣に居れる理由ができるから悪くもないと思ってる」
なな の肩が触れそうなくらい近くに居る伏黒は照れる事もなく そう言った。
仲間の死を目の当たりにし、呪霊と闘うと言う意味を思い知らされた なな 。
大切な仲間や、大切な人を守れるだけ強くなりたい。
なな は そう思った。
***おわり***