第146章 過去に囚われし者⦅五条⦆
「やったぁ!
ありがとう、なな さん」
陽が傾き出し、それぞれ部屋に戻るようになった。
「また明日ー♪」
仲良く寮へ戻る1年生'sを見送り、なな の隣に立っていた五条が口を開いた。
「…なな はさ、傑の事 忘れられないの?」
不安そうな声の五条に、なな は『忘れる必要はないでしょ?』と答えた。
「だってアイツは…」
『離反したら忘れなきゃいけない?
そんな事ないと思うよ。
過去を振り返ったって良いじゃない。
あの時の傑が返ってくる訳ではないけど、私は4人で過ごした学生時代が とっても楽しかった。
悟もそうでしょ?』
五条の方を向き、そう伝えると 五条は「…うん」と答えた。
『一度きりの青春。
無理に忘れる必要なんて無いの。
私たちの思い出が楽しいものであったように、あの子たち(1年生's)の青春を取り上げる事は何人たりとも出来ないんでしょ?』
ニッと口角を上げて そう伝えると、五条は「なな ってホントに僕と同い年?」と苦笑した。
『悟は術師としては最強だよ。
でも1人で最強であり続ける必要は無いよ。
寂しい時は側に居るからね』
五条を優しく抱き締めると、五条も なな の背に手を回した。
「僕は なな と居られれば ずっとアオハルだよ」
『何それ』
なな はアハハと笑った。
穏やかな優しい夕陽が2人を照らしていた。
***おわり***