第145章 麻痺⦅宿儺 ※暗⦆
私が此処に来て何度も耳にした音。
ー 悲鳴。
ー 泣き声。
ー 叫び声。
そんな色んな音と共に鉄の匂いが鼻につく。
自分の血ではないはずなのに、その場に立っている事が出来なくなり何度も倒れた。
その度、宿儺さまはケヒと笑った。
【これが俺の日常だ。
耐えられないであろう。
お前に此処は不釣り合いだ。
何処でも好きな処に行くと良い】
何度も言われたが、その度 私は『嫌です』と言った。
☆ ☆ ☆
なな が初めて宿儺に逢ったのは生け贄として宿儺の山に来た時だった。
他の人には視えない不気味なものが視える なな は村の人から忌み嫌われていた。
【アイツが居るから村が栄えないのだ】
【忌み子め】
ある時、宿儺が近くの村を襲ったと言う話が村に届き、宿儺に襲われないために村人は生け贄を用意したのだ。
それが なな だった。
なな も村で生きて行くのは無理だと思っていたため、生け贄として宿儺が現れるのを待っていた。
しかし目の前に現れたのは顔立ちの整った体格の良い男だった。
目や腕が4つあったが、なな は不気味に思うどころか、連れ去る為に抱き寄せられたその男の全てに惹かれたのだ。
『貴方に私の全てを捧げます。
…村をお助けください』
宿儺は なな をジッと見た後「何故恐怖しない」と言った。
『貴方はキレイです』
「は?」
嘘偽りの無い表情で答える なな に宿儺は間抜けな声を出した。