第121章 桜のころ⦅虎杖悠仁⦆
苦笑しながら そう言う なな に その人は目を丸くし、「そっか」と笑った。
「俺の事 撮ってくれて ありがと! なな ♪」
『え? なんで私の名前…』
ぽかん、とする なな に その人はニコニコしながら写真の下のタイトルを指差した。
そこには写真のタイトルと なな の名前。
カーっと顔を赤くする なな に、その人は自己紹介してくれた。
「俺、虎杖悠仁。よろしくな」
会場を出て、あの時の事を教えてもらった。
「あの時、ジィちゃんの病気が見つかって、先生からは 入院した方が良い って言われたんだ」
あの時と同じようにパーカーのポケットに手を入れ、虎杖は続けた。
「俺、ジィちゃんと2人暮らしだからさ、ちょっと寂しくなっちゃって……。
そんな時に あの桜を見つけたんだ」
『そぅだったんだ』
「サクラってさ、花が咲いたら あっという間に散っちゃうじゃん?
でも力強く咲いてる感じが好きなんだよなぁ」
虎杖はそう言って すでに葉っぱだけになった桜を見上げた。
なな もつられて桜を見た。
初めて話をした虎杖に、恋心を抱いたのは内緒の話。
***おわり***