第121章 桜のころ⦅虎杖悠仁⦆
桜の花びらが ひらひらと舞う中、桜と同じ薄いピンク色の髪をした その人は満開の桜を見上げていた。
パーカーのポケットに手を突っ込んで、桜を見上げる その後ろ姿は どこか哀愁があり絵になった。
私は無意識のうちに、首から下げていた一眼レフのシャッターを切った。
☆ ☆ ☆
特賞 『サクラと君』
『……うそ』
趣味で撮影している写真を市のコンテストに応募したら まさかの入賞。
なな は 額に入った自分の写真を ただただ 呆然と見つめた。
⦅ …まさか入賞するなんて………
黙って撮影しちゃった写真だからなぁ………
どぅしよう……… ⦆
腕を組み困ったなぁ、と眉間に皺を寄せていると隣に人の気配を感じた。
チラリと隣を盗み見ると、写真と同じピンク色の髪をした人。
ひと目で あの時撮影した人だと理解した なな は、無断で撮影した事を怒られるかもしれないと思い、ダラダラと冷や汗を流した。
「………」
その人は黙って写真を見上げ、少しだけ照れているように見えた。
『…怒ってないの?』
「え?」
『?!』
なな は無意識に その人を覗き込み、大きな独り言を呟いていたようだ。
隣の男の人は驚いた表情をして なな を見、人懐っこく笑った。
「怒ってねぇよ。
少しだけテレるけど」
『…良かったぁ…』
"怒ってない" との発言に、なな は安堵した。
『コレ撮ったの私なの。でも、黙って撮影しちゃったから被写体の人 怒っていたら どぅしよう。とか考えちゃって』