第118章 きっかけ⦅伏黒⦆
"反転術式が使える術師は貴重だ"
高専に入る前から ずっと言われてきた言葉だ。
なな が初めて伏黒と会った時、なな の反転術式はまだ未熟だった。
伏黒は式神を増やし、今では2級術師。
なな は高専に入り、家入から医学的な知識を教わり、少しずつ的確に処置できるようになってきた。
それでも前線で闘っている術師たちに引け目を感じていた。
そんな時、伏黒は玉犬を出しては何も言わず側に居てくれた。
「俺も玉犬も、なな の味方だ」
そう言って優しく微笑む伏黒の表情に、なな は トクン と胸が鼓動を打った。
『………強くなりたいな…』
隣に居られるくらい…。
伏黒には聞こえないくらい小さく、ポツリと呟いた なな の本音。
いつもボロボロな仲間たちを待つのが辛い。
一緒に最前線に立って仲間たちの役にたちたい。
でも、自分の身すら護れない私は高専で無事を祈るしか出来ない。
それがもどかしい。
"もっと強かったら…"
"もっと別の術式が使えたら"
"もっと……"
挙げたらキリが無いくらいの "もっと" 。
それでも今は自分の持っている物を高めようと思える。
それが仲間たちの為だから。
そう思わせてくれたのは伏黒のおかげだった。
『恵くん。私、頑張る!』
なな は吹っ切れたような明るい表情で伏黒を見て笑った。
***おわり***