第110章 バイト⦅宿儺 現パロ⦆
授業が終われば なな はバイトへ行く。
ある日、宿儺は なな に聞いた事がある。
なぜバイトをするのか、と。
バイトが無ければ ゆっくり放課後デートだってできるし、なな の家は家計が苦しいわけでもないのだ。
なな から返ってきた言葉は『早く自立したいから』だった。
宿儺の家庭は宿儺と双子の兄の2人暮らしだ。
両親は早くに亡くなり、親代わりに宿儺たちを育ててくれた祖父は最近病気で亡くなった。
贅沢は出来ないが兄の悠仁がバイトをしたり、両親や祖父が残していてくれたお金を切り崩す事で高校を卒業するまでは何とかなりそうだった。
一時期、宿儺もバイトをすると悠仁に伝えた事もあったのだが、「お前はちゃんと青春しろよ」と言われ、バイトをする事を拒まれた。
なな と付き合うようになり、勉強もそれなりに出来た宿儺は普通の高校生活を謳歌していた。
だが、学校の長期休暇に入り なな はバイトを始め、宿儺との時間は減ってしまった。
もともと恋愛に依存するタイプではなかった宿儺は、あまり気にしなかったが楽しそうにバイトに向かう なな を見るのは面白くない。
「……悠仁、俺もバイトをするぞ…」
自宅に帰ってきた宿儺は悠仁にそう言うと、悠仁は「はぁ?!」と驚いた声を出した。
「なな のバイト先でバイトする」
「なな のバイト先、求人募集してなかったら どぅするんだよ」