第106章 一途⦅虎杖悠仁⦆
『悠仁、しっかりして』
自分の体を抱きしめ、小さくカタカタと震えている虎杖。
『悠仁ッ!』
虎杖を強く抱きしめると、やっと虎杖に なな の声が届いたようだ。
なな の顔を見て、虎杖は なな の頬に手を添えた。
虎「なな ……。無事で良かった…」
『私は大丈夫。
悠仁、しっかりして』
優しく虎杖に話しかける。
虎「俺は………たくさんのヒトを殺した………。
俺は もう、俺を許せない………」
なな から視線を外す虎杖の顔を両手で掴んで自分に向ける なな 。
『"俺の人生、なな に全部あげる"
高専に来て、悠仁が私に言ったコトバだよ』
虎「あげるよ。
俺は なな が好きだから」
『私も悠仁が大好き』
コツン、と虎杖の額に自分の額を当てながら なな はそう言い、額を離して 真っ直ぐ虎杖の目を見て続けた。
『戦いから逃げないで。
呪術師である以上、戦いから逃れる事は出来ない。
悠仁にとって、それ(戦い)を拒否することは "死" を意味するの。
だから戦って。戦って自分の命を守って』
もう一度優しく虎杖を抱き締める なな 。
少しずつ虎杖の曇りが晴れるように、虎杖は瞳の中に火を灯した。
虎「ありがとう、なな 。
なな を好きになって良かった」
なな を抱き締め、虎杖は立ち上がった。
『気を付けてね』
最愛のヒトを戦いの場に送り出す。
なな も虎杖も、これが正しい愛情なのかは もう分からない。
戦いに身を置くことは、オトナになりきれない彼らの生きてる証。