第15章 山崎退《白いお皿プレゼント》
「もう、お昼食べた? まだならこれ」
そう言って、白いお皿を○○さんは俺にプレゼント。
そこに盛り付けられていたものを見て、俺は唖然とした。
「に、肉じゃが……」
ニンジンジャガイモ肉肉ジャガイモ肉玉ネギ。こんもりと盛られた具材達。
「退君、肉じゃが嫌いだった?」
俺の表情を察したのだろう。○○さんは申し訳なさそうな顔を見せる。
嫌いじゃない。○○さんが作ってくれるものならば、むしろ何だって好きだ。
しかしこのタイミング。そこに俺を病院送りにしたものを見てしまう。
でもこれは、○○さんが作った肉じゃがだ。毒など盛られているはずがない。
盛られているのは、溢れんばかりの愛だ。
「いえ、大好きです! いただきます!」
○○さんは微笑んだ。
肉じゃが生活、まだまだ三日目。いいや、今日が本当の一日目だ。
「それだけじゃ足りないだろうから」
俺は肉じゃがを食らいつつ、○○さんに目を向けた。
大江戸ストアーと書かれたビニール袋を取り出している。
その形状、うっすらと見える中身の文字に俺は危機感を覚える。
目を凝らして見てみると、そこにはあん……
「今、パン祭りやってるでしょ? スーパーに行くたびに買ってたら、こんなになっちゃって」
○○さんは袋の中身をテーブルの上にぶちまけた。
そこにはこの二ヶ月間、俺が買い続けていたものが広がった。
「退君!?」
仰向けに倒れる俺の耳に、ごめんね、という○○さんの小さな声が届いた。
「倒れるくらい肉じゃが嫌いだったの? ムリに食べてくれなくてよかったのに……」
肉じゃがじゃない。決定打はあんパンだ。
山崎パン祭り六十三日目。それは、犠牲者が出る程、盛大なお祭り。
(了)