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~あさきみじかしゆめ~ 銀魂短篇集

第12章 河上万斉《拙者達のどうでもいい日常》


 近頃、隊士達の魂の鼓動が狂っているでござる。
 規律を失くした集団は、烏合の衆と化すのみ。
 それもこれも、あの女が入隊したせいでござる。


《拙者達のどうでもいい日常》


「戦いには向かないので、資金稼ぎに心血を注がせていただきます」

 小さな体に、あどけない笑顔。
 攘夷志士には不釣り合いな姿を携えて、○○は鬼兵隊に入隊した。
 何の因果か、拙者は○○のお守り、もとい指導を晋助に任されたでござる。
 天人相手の交渉はお手の物でも、ガキの世話は御免被りたい。

「具体的に、どうやって資金を調達するつもりでござるか」

 ○○は不敵に微笑んだ。

「体で、です」

 その場にいた全員が、ぽかんと口を開けて○○の体を凝視した。
 こんな女に手を出すのは、武市くらいでござろう。



 ○○の策は単純明快。
 男をホテルに連れ込み、シャワーを浴びている間に金品を奪う。
 それがまた手際のよいこと。
 次から次へと男を引っかけ、あっという間に財布を取って戻って来る。

「世の中、武市ばかりでござるか?」

 そういうわけではないようでござった。
 ○○は話術で相手を誑し込む術に長けていた。
 体目当てではなく、話がしたくてホテルまで同行する男が多いようでござる。
 その話術のせいか、隊士達も一人、また一人と○○に取り込まれている。
 ○○を囲み、和やかな雰囲気が醸し出されている。
 そんなものが鬼兵隊に必要なはずがない。
 あってはならないものでござる。
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