第7章 万・真・桂《新しい一年はニギニギガヤガヤ始めましょい》
《新しい一年はニギニギガヤガヤ始めましょい》
除夜の鐘が鳴り出した。
大鳥居の横で新八は首を伸ばし、目立つはずの銀髪頭を捜していた。
「銀さん! こっちです、こっち!」
人混みの頭の群れからほんの少し飛び出している銀髪パーマを見つけ、新八は手を上げた。
銀時は寒そうにマフラーを顔まで巻き、面倒臭そうに歩いて来る。
「遅いですよ」
「待ち合わせに遅れて来る男はモテないアル」
新八と神楽も完全防寒。
厚手のコートにマフラー、モコモコの手袋。神楽は兎の絵が描かれた耳あても装着している。
大晦日の夜。一年にこの日だけは、未成年でも深夜の外出が許される。ただ、そこには保護者がいることが望まれる。
「ガタガタうるせーな。来たくもねーのに来てやっただけでありがたいと思え」
だが、銀時がワザワザ外出したのはこの二人のためではない。
「○○さんは一緒じゃないんですか?」
大晦日は初詣に行きたいと新八と神楽が言い出した時、一緒に行きたいと○○が言い出した。
新八と神楽だけだったら、妙にでもお守りを任せ、自分は自宅でのんびりしていただろう。
銀時は背後を振り返った。そこにあるはずの姿がないことに気づき、溜め息を吐いた。
「また迷子になりやがったのか、アイツ」
「一緒に来たんですか?」
「だからこんな人混みに連れて来るのは嫌だったんだ」
参道は一直線。
いくら○○でも逸れることはないだろうと油断していた。
「○○さんが迷子の達人だって、銀さんが言ってたんじゃないですか。注意して見ててあげて下さいよ」
「ガキじゃあるめーし、なんで俺が注意しねーとならねーんだ」
「○○さん、小さいんですから、人混みに押し流されちゃったのかもしれないですよ」
新八は心配そうな顔で周囲を見回す。
「子どもに間違えられて保護されてるかも」
「保護されてたら好都合だろ。迷子センターにでも連れて行かれてりゃ、捜す手間が省けらァ」