第30章 高杉晋助《仏桑花》
《仏桑花》
どういう気まぐれだろう。祭りに連れ出すなんて。
今まで一緒に出かけたことなんてないのに。
隣を歩く顔を横目にうかがう。
御神灯が照らす横顔。
部屋で二人きりの時と変わらない。
何を考えているのか、わからない。
「こんなに人が暮らしてたんだね」
子ども達が私と晋助の横を駆け抜けた。
「隣は都だからな。ここの住人だけじゃねェ」
高杉晋助という男のことを私はよく知らない。
知らなくていいと思っている。
知ってしまったら、二度と会えない気がしている。
祭囃子も、人いきれも、すぐ傍にあるのに遠く感じる。
間近にあるのは晋助だけ。
ふと目に入った紫に足を止めた。
「花の屋台なんて、めずらしい」
台座に敷き詰められた夏の花。
鳳仙花、千日紅、百日草、桔梗に松葉牡丹――
淡色の和花の中、そのひと群れだけが鮮やかな朱色を放っていた。
「仏桑花」
京の祭りには不似合いな南国の花。
晋助が一輪、手に取った。