第28章 土方十四郎《ハッピーバースデーの夜に》
《ハッピーバースデーの夜に》
午後九時を過ぎた食堂は閑散としていた。
マヨネーズまみれの夕飯を頬張りながら、土方はテレビに目を向けている。
大江戸テレビの報道番組だ。
「今頃夕飯か」
背後から聞こえた声。
ガタッと椅子を引き、土方の隣に腰を下ろしたのは近藤だ。
「今日は仕事にならなかったからな」
昼間は通常業務ではない対応に追われた。
夕方から普段通りの業務に取りかかったが、気づけば夜も遅くなっていた。
「トシにばかり負担をかけてすまないな」
近藤は食事の盆は手にしていない。
夕飯はすでに食べたのだろう。
ではなぜ食堂にやって来たのか、その理由は土方にもわかっている。
「今に始まったことじゃねーだろ」
業務の大半は土方が仕切っている。
負担を軽減したくとも、他の隊士では頼りにならないことは土方も近藤もわかっている。
「今日の仕事が大変になることは、引き受けた時からわかってたしな」
近藤はぎこちない笑みを浮かべる。
土方の大変さも考えず、今日の仕事を二つ返事で承諾したのは近藤だ。
――本日、五月五日は子どもの日。各地で子どもの成長を祝うイベントが行われました。
女性アナウンサーの言葉に、土方と近藤は揃って視線を画面に向けた。
夕食を終えた近藤が食堂にやって来たのは、真選組で撮影された昼間のイベントの模様を見るためだ。