第27章 沖田総悟《ドS彼氏と毒舌彼女》
アイツと出逢ったのは、去年の今頃のことだった。
《ドS彼氏と毒舌彼女》
普段よく通る道を歩いていた私は、普段は見ない光景に出くわした。
門の前には長机が置かれ、数人の親子連れと思しき人が短冊を飾っている所が見えた。
「よかったら、願い事を書いて行きませんか」
私の視線に気づいた地味な男に声をかけられた。
ここは真選組の屯所前。黒い洋服は隊士の証だ。
「地域の皆さんに願い事を書いていただく催しをしているんです」
男は私にペンと細長い青い紙を差し出した。
「汚名返上のための施策ですか」
真選組といえば、地域住民に嫌われていることで有名な警察組織。
前にアイドルの寺門通に一日局長を頼んだ挙句、隊士達の目の前で誘拐されるという失態も犯していたはずだ。
「こんなことくらいで真選組の悪評は消えないでしょ」
「え? えーっと……」
ペンと紙を受け取ることなく、私は男の横を通り過ぎた。
赤い紙、青い紙、黄色い紙。
色とりどりの紙が飾られた笹を横目に通り過ぎようと思ったけれど、その紙が見えて足を止めた。
一枚だけ、真っ黒い紙が飾られていた。
真っ黒い紙に真っ黒いペンで願いを書いても読めないだろう。
と思ったが、よく見ると、薄っすらと赤い色が見えた。
その紙は黒い紙ではなく、赤い紙だった。びっしりと、隙間なく文字が書かれているだけだった。
以下のような。
『お妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さんお妙さん――――