第22章 高杉晋助《松下村塾のクリスマス》
《松下村塾のクリスマス》
「三人とも、そんな顔しないでよ」
左側には精気のない目で虚空を見やる銀時、右側には口を真一文字に結んで腕を組む小太郎。
正面には食卓に肘をついて眉間に皺を寄せた晋助が座っている。
その食卓には、塾生たちが食べ散らかしたチキンやケーキの残骸が散らばっている。
「一応、まだパーティの最中なんだよ」
本日は十二月二十四日。
松陽の提案でクリスマス会が行われることになり、豪勢な料理が振舞われた。
皆でわいわいと盛り上がったが、日が暮れるにつれ、一人、また一人と塾生は帰って行った。
すっかり日が落ち残っているのは、○○と前出の三人のみ。
「つまらないなら、帰ればいいのに」
○○はポテトをつまんで口へと放り込んだ。
家族のいない銀時はこのまま松陽の家に泊まることになり、家が遠い○○も親の承諾を得て泊まることになった。
その上ナゼか小太郎までもが泊まると言い出し、さらには家には居づらいと晋助までもが帰宅を拒んだ。
結果、四人でのパーティが継続しているが、その雰囲気はまったくパーティではない。
銀時、晋助、小太郎。この三人は普段からいがみ合いが多く、和気あいあいなど求められるはずがない。
笑顔がまるで見えない三人に釣られ、○○まで硬い表情のままパーティは佳境を迎えた。
楽しいといえば楽しいが、どことなく気詰まりのするパーティになっている。
「まァ、夜も更けましたから、パーティはお開きとしましょうか」
笑顔の恩師、松陽が口を開く。
何が楽しいのか、彼はずっと表情を緩めていた。