第1章 R h p l ss
「あ、笑った。」
すやすやと眠る名前の表情に驚いたが、万次郎は冷静にナースコールを押した。
何年も無表情だったのに、名前が笑ったのだ。
「やっぱ、オマエの笑顔・・・オレ大好きだ」
横たわった名前に抱きつき、万次郎はぽつんと呟いた。
「まい、きーくん・・・?」
思わず目を見開いた
数年眠りに付き、二度と目覚めることがないかもしれないと
医師に告げられていた名前が突然目を覚ましたのだ。
「名前、わかるか!?」
喜びに満ちた表情の万次郎とは異なって
名前の表情はみるみるうちに青ざめて行った。
黒髪の佐野さんがここにいる?なんで?
聞き慣れない異国語と、見慣れない病室
先程まで面倒を見ていた私達の子供の姿が見えない。
「こ、こはどこ・・・?私の、マイキーくんの・・・子供は・・・?
どこ・・・。どこなの・・・」
自分の子を心配し、泣きじゃくる名前を見て
万次郎は、何が起きたか理解できなかった。
あぁ、名前は壊れてしまった
オレが、名前を壊した
「目が覚めたのなら退院してくれ」
そう医師に吐き捨てれた。
特に目立った外傷も見られなかった名前は言葉通り退院となった。
「佐野さんに、私とマイキーくんとの子供見せてあげたかったなぁ。ママがこんなに探してるのにまだ隠れんぼしてるみたい、ふふ、ごめんね。
もうすんごくかわいいんだよ〜!私とマイキーくんの宝物なの!」
オレのと隣で子供の様にはしゃぐ栗色の髪の毛をした綺麗な女性は
もう、オレの事がマイキーだとは分からず佐野さんと呼ぶのだった。
その瞳に俺の姿は映っていなかった。
例えそうだとしても、オレはお前を愛し続ける。
それがオレの最後の絶望だから。
「あぁ、オレも見たかった・・・名前」
fin