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3月9日  【A3】

第4章 寒緋桜


 劇場前の掲示板と、それから駅前の掲示板に入居.入団募集の手づくりのチラシを作って貼ったのはいったいいつのことだったっけ?

 それから、

 頼みの綱である監督からも、返事はまだみたいだし…

 あんなふうに意気込んでたのに、結果が追いついてくれない。

 今日もまたそんなことを思いながら、誰も使っていない寮の部屋を一つずつ丁寧に掃除していく。

 勤め先の花屋は久しぶりのお休みだった。

 なんでも、地方からおばあちゃんの親戚が来るようで、今日はそのために急遽休みにするという話。

 せっかくの休み、何かすることは………

 「芽李さん!!大変です!!大変なんです!!」

 ドタバタと走る支配人が持ってきたのはとんでもないニュース。

 「古市さんが!もう待てないって!!連絡が!!
 どうしましょう、まだ劇団員も集めてないですし…」

 がっくしと肩を下げた支配人。

 「もう待てないってどういうことですか?」
 「劇団の取り壊しを決めたぁって!」
 「え…?」
 「今まで散々待ってやっただろうと…春組の公演を、いっ、一週間後までにはしないと解散だって!」


 「っ、いまからでも遅くないです!早く劇団員どうにかしないと!!」




 ー…プルルル

 こんな時に!

 


 「私が出ます!支配人とりあえず、後でちゃんと!話聞かせてください!!」


 項垂れる彼に、しっかりしろ!

 という意味も込めて、バンっと背中に気合を入れてやる。

 突然鳴り響いた電話に、内心イライラとしつつも、耳に届いた声が、悲しく揺れていたから


 「はい、MANKAIカンパニー………あ、え、」


 …怒るわけにもいかなくなった。

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