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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第18章 どうでもミルフィーユ◉相澤消太



USJからの帰り道、バスの窓から眺めた道路端ですら先週よりも色が増えたように思う
見慣れた枯れ木にも小さな白い花がついて、まるで俺だけ置いて行かれているような気分になった


「あれ?ショータ花粉症かぁー?」

シャワー後の更衣室、大きなくしゃみを響かせた俺を見て白雲が目を丸くする


「瞬きで抹消切れんのに大変だなァHAHA!」

凍えそうな寒さも気づけば身を潜めて、汗ばむ日も増えてきたこの頃
いつも以上の乾きに加え痒みまで感じるこの季節が俺は好きじゃない、そんな事を考えながら眼薬を点した






———好きに、なっちゃった、かも


空調の音だけが響いた静かな図書室、俺を見上げた目に浮かんだ困惑と期待を鮮明に覚えている
あの日から一ヶ月、最初こそ多少浮かれていたものの、現実は全く以て上手くいっていないのだ


「てかめぐとショータって結局付き合ってンだっけ?」


「・・・俺が聞きたい」

なら聞いてきてやろうか?、そう言って白い歯を見せた白雲の向こうで山田がにやにやと笑みを浮かべた


「いーや?そうは見えねェよ?」

やっぱひざしクンが本命だったかァ!、そう得意げに垂れた山田が鏡を見て髪を整える
苛立ちのままにガンッとそのロッカーを蹴ると更衣室に白雲の笑い声が響いた



「今日は、・・・先に帰る」

「お、今日こそめぐを捕まえんだな!?」

「節目だもんなァ?一ヶ月記念日ってヤツ!」

「るせえ」

にやにやと居心地の悪い視線に晒され、顔が熱くなっていくのが分かる
何が一ヶ月記念日だ、聞こえるように大きく舌打ちをしてロッカーの中の荷物を引っ掴んだ


「「ショーチャン頑張ってぇ〜!」」

「・・・」

背後から飛んでくる耳障りな声を振り切るようにガシガシと髪を掻き乱すと、俺は早足で廊下へと飛び出して

開いた画面、かろうじて既読の文字はあるものの彼女からの返信は相変わらず無い


「一ヶ月前と同じ場所で待ってる」なんて、回りくどい言い方をしたのはきっと、無かったことにしたくないから、だと思う

薄暗い照明の並んだ廊下の先、重い足でたどり着いた大きな硝子の二枚扉に映る自分を睨みつける

引く手に力を込めるとキィ、と音を立てて開いた扉
紙の匂いを肺いっぱいに吸い込んで足を踏み出せば背の高い本棚の向こう、窓際の席で長い髪がふわりと揺れた
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