第19章 陰陽師助手記録帳参
唖然とした顔の野武士がじりじりと
後ろに下がるのに合わせ、
狐面の男も一歩前に踏み込む
「っなんだこいつ」
「ひ、引くぞ!」
一人が声を上げたのを
全員が転がるように走り出す
それを見届けた後、
狐面の男は無言で背を向けた
(あっ、行ってしまう!)
一瞬迷った挙句
声をかける
『あのっ
──────義経様?』
「………」
ぴたりと足を止め
男は振り返って面を外した
「どうしてわかった」
(いやわかるがな!!)
義経様は不思議そうに
首をかしげる
『あれだけぼろを出せば
誰でも……というか
どうして義経様がここに…?』
てっきり次に会う時は
戦場だと思っていた
(引き止めたもののこの状況は
まずいかも、)
人気のない場所に
敵将と二人きり
(あの時は部下の人を
手当してその代わりに
見逃してもらったけど、)
改めて状況を把握したは
身体を強ばらせて一歩後ろへ下がる