第36章 regain
そうして夜になり、ランも万次郎もシャワーを浴びて着替え終わる。
「あ、そーだラン。
あのさ……」
万次郎が、ちぎれたクマのキーホルダーを見せてきた。
「これ…ちぎれちゃってさ」
「あーほんとだ。じゃー直してあげる!
最近私ちょっと裁縫得意になったんだよね〜」
ニッと笑うランに万次郎は眉を寄せる。
「つぅか…ホントに大丈夫か?
どっか怪我とかしてんじゃねぇの」
さっきまで明るかったくせに、
突然心配そうな顔を見せられ目を丸くしてしまった。
「全然してないよ?」
「じゃあ心は?」
「えっ……」
真剣に見つめてくる万次郎から思わず目を逸らしそうになった。
確かに…
傷つくようなことはいっぱい言われた。
でも……
「ふふ…大丈夫だよ。なんもない。
隆と万次郎が早く来てくれたから」
それに……
「最後いっぱいやっつけられて、すごーくスッキリしたの!めっちゃ吹っ切れたわ私!」
満面の笑みでガッツポーズするランに、万次郎も笑みを浮かべた。
ランは、今回の1件で本当に吹っ切れたみたいに元気になっていた。
「… ラン、俺にはなんでも言えよ。
俺は昔から、何があってもランの味方だから」
優しく笑う万次郎に頷いてランも笑った。
しばらくして、
三ツ谷が迎えに来てくれた。
時間までまだ少し早いが、ランは大量のバレンタインを入れた紙袋を持って三ツ谷のバイクに跨った。