第18章 rapport
「言っとくけど!私が取ったのはお菓子じゃなくてこれだからね?!」
ランはポケットから
小さいクマのぬいぐるみキーホルダーを出した。
「ぎゃははははは!なにそのダセーの!」
「はぁあ?!可愛いじゃん!めちゃめちゃ!
そんな笑うなら万次郎のキーに着けてやる!」
ランは万次郎のバブの鍵に
それを着けた。
「ぶっ!万次郎がこんな可愛らしいのしてるとかギャップ萌えってやつだね!」
バカにして笑ったつもりなのだが、
万次郎は意外にも口を噤んで鍵を手に取り、キーホルダーを眺め始めた。
「こいつに名前つけるかな…」
「え?名前?」
「そーだなぁ。このおもしれぇ顔…やっぱ…」
「?」
「ラン2号かな♡」
「なっ!なにそれっ?!」
「そうすりゃいつもお前と一緒にいられんじゃん。」
「は?」
「だってお前、いつも三ツ谷んとこ行っちゃうんだもん」
笑っているのにどこか寂しそうにそう言われ、
ハッとする。
"昔から、誰かに甘えたことがない目よ"
ランは思わず万次郎を抱き締めてしまった。
「…… ラン?」
「万次郎……いつでも甘えてね?私には。」
しばらくして、
うん。と答えた万次郎は
今までにないくらいギュッと抱きついてきた。
いろいろなものを抱え込んでは手放せない強がりな万次郎の頭を、いつまでも撫でていた夜だった。